イタリアンラーメンではなく“ルカ”のラーメン

「新横浜ラーメン博物館」は、世界17ヵ国、26都市のラーメン店をリサーチし、2013年から、日本に店舗がなく現地で独自に誕生して、地元で支持を得ているラーメン店を紹介する企画をスタートさせた。これまでラー博に誘致した店舗は、アメリカ・ハリウッドの「IKEMEN HOLLYWOOD」、ドイツ・フランクフルトの「無垢ツヴァイテ」の2店舗。その第3弾となるのが、イタリア・ミラノの「CASA LUCA」だ。独学でラーメン作りを学んだという、ミラノ生まれの店主ルカ・カタルファモ氏を取材した。


キングとんこつラーメン(1,200円)

カーザルカ
「新横浜ラーメン博物館」店
所在地=神奈川県横浜市港北区新横浜2-14-21
新横浜ラーメン博物館内
営業時間=午前11時~午後10時、日曜・祝日 午前10時30分~午後10時、無休


キングとんこつラーメン(1,200円)

具はチャーシュー、角煮、煮卵、メンマ、刻みネギ、なるとなど

ペペロンチーノ和え麺(880円)



ペペロンチーノ和え麺(880円)

唐辛子をふんだんに使用した、スープのないあえ麺。あえ麺用の中太麺をオリーブオイル、和風だし、唐辛子、醤油だれであえている


YouTubeで作り方を独学

「ラーメンに国境はなし!」と、独自の味作りに打ち込むルカ・カタルファモ店主

「ラーメンに国境はなし!」と、独自の味作りに打ち込むルカ・カタルファモ店主
 イタリア人で生粋のミラノっ子が作るラーメンと聞くと、トッピングにトマトやバジル、香味油にオリーブ油が使われ、仕上げにパルメザンチーズを振りかける……とイタリアンテイストを想像するものだ。しかし、ルカ氏の作るラーメンは、この予想を見事に裏切る。煮卵、メンマ、刻みネギ、なるとがのり、スープは豚骨。彼には「イタリアっぽいラーメン」という発想はなく、またそれを要求されることも好まないという。
ルカ氏が初めてラーメンと出合ったのは、ニューヨークの「一風堂」。当時、彼はレストランで働いて生活費と旅費を稼ぎながら気ままな旅を続けていた。働いていたレストランの近くに「一風堂」があり、常に長蛇の列ができているのが気になったルカ氏は、ある晩、立ち寄ってみる。
使われている食材は、イタリア料理に共通するもの。たとえば麺の原材料はパスタと同じ小麦粉、チャーシューはパンチェッタに似ている。しかし、それらがスープと一体となったときに、1杯のラーメンが完成する。ルカ氏は「衝撃的でした。まるでお母さんにハグされているような心温まる印象でしたね」と語る。この出合いが、彼のラーメン熱に火を付けた。
とはいうものの、ラーメンの作り方を教えてくれる人はいない。そこで、彼が思いついたのが、ラーメンの作り方を紹介しているYouTube の利用。日本語で解説しているので、言葉は理解できなかったが、何度も繰り返し見て、作り方を研究した。
「一風堂」のラーメンに触発されたルカ氏が目指したのは、もちろん豚骨ラーメン。しかし、それは「一風堂」の模倣ではない。彼がイメージするオリジナルの豚骨ラーメンだ。店をオープンさせてからも改良を重ねて、現在のラーメンにたどり着く。
「ラーメンにはバラエティーがあります。昔ながらの日本のラーメンにこだわる必要もないし、イタリア人が作るからといって、イタリアンテイストを意識する必要もない。ラーメンにルールはないし、作り手の国籍も関係ありません。私が作るラーメンは、あくまでも〝ルカ〞のラーメンなんです」と強調する。
作り手が情熱とプライドを持って作ったラーメンは、国籍や国境に関係なく受け入れられる。ラーメンが持つこのボーダーレスな特性こそ、グローバルフードとしての地位を獲得した理由といえるだろう。


オープン30分前から行列 ミラノ初のラーメン専門店

ミラノ店の店頭。待ち並ぶ習慣のないイタリアでも行列ができる

ミラノ店の店頭。待ち並ぶ習慣のないイタリアでも行列ができる
 ミラノ本店の屋号は「CASA RAMEN」。開業は2013年9月。宣伝は一切しなかったがオープン時から盛況で、その後口コミで店の評判が広まり、開業から2~3ヵ月後には、行列のできる繁盛店に。現在は、常に満席状態で1時間半から2時間待ち。来店者から携帯番号を聞き、席が空くと連絡を入れるという方法で、店の外で待たせない工夫をしている。週末の込み合うときには、来店者数が300人にもなるという。

ミラノ店の店内。繁忙日は開店から閉店まで満席

ミラノ店の店内。繁忙日は開店から閉店まで満席
 出店費用は約5万€。前の店が店内をリフォームしたのち、3ヵ月で閉店したところに居抜きで入ったので、費用の負担は小さかった。ルカ氏の奥さんがテーブルをDIYしたり、壁をペイントしたりして出費を抑えた。坪数10坪、席数20席。平均客単価20€。
「新横浜ラーメン博物館」内店は、今年5月からオープン。


20時間かけて炊くスープ 麺にはパスタ用のデュラム粉

理想のラーメンを豚骨スープで追求し続けるルカ氏

理想のラーメンを豚骨スープで追求し続けるルカ氏
 スープは豚骨を100%使用し、20時間かけて作り上げる。YouTube でラーメンの作り方を学んだルカ氏は、最初、スープを白濁させる方法が分からなかったが、使用する豚骨の部位を変えたり、骨だけではなく肉も使用したりするなどの試行錯誤を重ねて、豚骨スープを完成させた。
たれは2種類の醤油に、昆布、鰹節、煮干し、干し椎茸で取った和だしを加え、香味野菜をオリーブ油でソテーしたものを漬け込む。ロンドンのうどん店でだしの勉強をした成果が生かされている。

パスタマシンを応用して製麺を行う

パスタマシンを応用して製麺を行う
 麺は、パスタ用デュラムセモリナ粉とイタリアパンに使用される小麦粉をブレンド。程よいもちもち感と歯切れのよさが特徴の中細ストレート麺。ミラノ本店では、ラーメン用の製麺機が高価なこともあり、パスタマシンで製麺している。
具のチャーシューは、豚ばら肉にイタリア産岩塩をすり込み、グリルしたものを真空低温調理で仕上げる。イタリアの豚ばら肉の塩漬け、パンチェッタの製法を取り入れて作っている。
ルカ氏が作るラーメンは、開店当初から改良に改良を重ねてきた。「お客さんの意見を聞いて、どうしたらよりおいしいラーメンが作れるか、トライ&エラーの繰り返し。お客さんにインスパイアされながら、今の味にたどり着きました。スープをひと口飲んだときにインパクトがあり、ふた口目はまた違った印象があり、最後まで飽きさせない。スープを飲み干しても、重さを感じさせないラーメンに仕上がっています」


「カーザルカ」の愛用食材

キッコーマンしょうゆ

キッコーマンしょうゆ
製造販売=キッコーマン食品
(東京本社・東京都港区)
規格=20ℓ

ミラノで醤油といえばコレ

キッコーマンしょうゆの特徴である鮮やかな色、コクとキレのバランスがよい味、華やかな香りを持つ。和・洋・中どんな料理にも合い、世界中で使用されている。「ミラノでも醤油といえばこれですね。この醤油に和だしを加えて、香りとコクをプラスしたのが、ミラノとんこつラーメンのたれです」とルカ氏。


ルカ・カタルファモ

ルカ・カタルファモ
清掃会社で独立成功後に渡米 NY一風堂に衝撃を受ける

1976年イタリア・ミラノ生まれ。20歳の時にミラノで清掃会社を起業。経営が軌道に乗った30歳の時、会社を兄弟に譲り、「世界中のいろんな国を見てみたい」とイタリアを脱出して旅に出る。もともと食べることが好きだったこともあり、出発に先立って6ヵ月間、ミラノのイタリアンレストランでアルバイトをして、若干の料理修業をする。その後、ニューヨーク、シドニー、ロンドンを回り、旅費と生活費を稼ぐために、各地のイタリアンなどのレストランで働く。転機になったのが、ニューヨークの「一風堂」での豚骨ラーメンとの出合い。その味に衝撃を受けたルカ氏は、ラーメンへの情熱と関心を高めていく。ニューヨークに滞在していた2009~10年の約1年間、ニューヨーク中のラーメン店を食べ歩いた。その後、ロンドンのうどん店でだしの勉強したのち、日本に1ヵ月間滞在し、毎日3食以上のラーメンを食べ続けて研究。13年、37歳の時に、ミラノでラーメン店を開業する。

adminラーメントレンドイタリアンラーメンではなく“ルカ”のラーメン 「新横浜ラーメン博物館」は、世界17ヵ国、26都市のラーメン店をリサーチし、2013年から、日本に店舗がなく現地で独自に誕生して、地元で支持を得ているラーメン店を紹介する企画をスタートさせた。これまでラー博に誘致した店舗は、アメリカ・ハリウッドの「IKEMEN HOLLYWOOD」、ドイツ・フランクフルトの「無垢ツヴァイテ」の2店舗。その第3弾となるのが、イタリア・ミラノの「CASA LUCA」だ。独学でラーメン作りを学んだという、ミラノ生まれの店主ルカ・カタルファモ氏を取材した。 カーザルカ 「新横浜ラーメン博物館」店 所在地=神奈川県横浜市港北区新横浜2-14-21 新横浜ラーメン博物館内 営業時間=午前11時~午後10時、日曜・祝日 午前10時30分~午後10時、無休 キングとんこつラーメン(1,200円) 具はチャーシュー、角煮、煮卵、メンマ、刻みネギ、なるとなど ペペロンチーノ和え麺(880円) 唐辛子をふんだんに使用した、スープのないあえ麺。あえ麺用の中太麺をオリーブオイル、和風だし、唐辛子、醤油だれであえている YouTubeで作り方を独学 「ラーメンに国境はなし!」と、独自の味作りに打ち込むルカ・カタルファモ店主  イタリア人で生粋のミラノっ子が作るラーメンと聞くと、トッピングにトマトやバジル、香味油にオリーブ油が使われ、仕上げにパルメザンチーズを振りかける……とイタリアンテイストを想像するものだ。しかし、ルカ氏の作るラーメンは、この予想を見事に裏切る。煮卵、メンマ、刻みネギ、なるとがのり、スープは豚骨。彼には「イタリアっぽいラーメン」という発想はなく、またそれを要求されることも好まないという。 ルカ氏が初めてラーメンと出合ったのは、ニューヨークの「一風堂」。当時、彼はレストランで働いて生活費と旅費を稼ぎながら気ままな旅を続けていた。働いていたレストランの近くに「一風堂」があり、常に長蛇の列ができているのが気になったルカ氏は、ある晩、立ち寄ってみる。 使われている食材は、イタリア料理に共通するもの。たとえば麺の原材料はパスタと同じ小麦粉、チャーシューはパンチェッタに似ている。しかし、それらがスープと一体となったときに、1杯のラーメンが完成する。ルカ氏は「衝撃的でした。まるでお母さんにハグされているような心温まる印象でしたね」と語る。この出合いが、彼のラーメン熱に火を付けた。 とはいうものの、ラーメンの作り方を教えてくれる人はいない。そこで、彼が思いついたのが、ラーメンの作り方を紹介しているYouTube の利用。日本語で解説しているので、言葉は理解できなかったが、何度も繰り返し見て、作り方を研究した。 「一風堂」のラーメンに触発されたルカ氏が目指したのは、もちろん豚骨ラーメン。しかし、それは「一風堂」の模倣ではない。彼がイメージするオリジナルの豚骨ラーメンだ。店をオープンさせてからも改良を重ねて、現在のラーメンにたどり着く。 「ラーメンにはバラエティーがあります。昔ながらの日本のラーメンにこだわる必要もないし、イタリア人が作るからといって、イタリアンテイストを意識する必要もない。ラーメンにルールはないし、作り手の国籍も関係ありません。私が作るラーメンは、あくまでも〝ルカ〞のラーメンなんです」と強調する。 作り手が情熱とプライドを持って作ったラーメンは、国籍や国境に関係なく受け入れられる。ラーメンが持つこのボーダーレスな特性こそ、グローバルフードとしての地位を獲得した理由といえるだろう。 オープン30分前から行列 ミラノ初のラーメン専門店 ミラノ店の店頭。待ち並ぶ習慣のないイタリアでも行列ができる  ミラノ本店の屋号は「CASA RAMEN」。開業は2013年9月。宣伝は一切しなかったがオープン時から盛況で、その後口コミで店の評判が広まり、開業から2~3ヵ月後には、行列のできる繁盛店に。現在は、常に満席状態で1時間半から2時間待ち。来店者から携帯番号を聞き、席が空くと連絡を入れるという方法で、店の外で待たせない工夫をしている。週末の込み合うときには、来店者数が300人にもなるという。 ミラノ店の店内。繁忙日は開店から閉店まで満席  出店費用は約5万€。前の店が店内をリフォームしたのち、3ヵ月で閉店したところに居抜きで入ったので、費用の負担は小さかった。ルカ氏の奥さんがテーブルをDIYしたり、壁をペイントしたりして出費を抑えた。坪数10坪、席数20席。平均客単価20€。 「新横浜ラーメン博物館」内店は、今年5月からオープン。 20時間かけて炊くスープ 麺にはパスタ用のデュラム粉 理想のラーメンを豚骨スープで追求し続けるルカ氏  スープは豚骨を100%使用し、20時間かけて作り上げる。YouTube でラーメンの作り方を学んだルカ氏は、最初、スープを白濁させる方法が分からなかったが、使用する豚骨の部位を変えたり、骨だけではなく肉も使用したりするなどの試行錯誤を重ねて、豚骨スープを完成させた。 たれは2種類の醤油に、昆布、鰹節、煮干し、干し椎茸で取った和だしを加え、香味野菜をオリーブ油でソテーしたものを漬け込む。ロンドンのうどん店でだしの勉強をした成果が生かされている。 パスタマシンを応用して製麺を行う  麺は、パスタ用デュラムセモリナ粉とイタリアパンに使用される小麦粉をブレンド。程よいもちもち感と歯切れのよさが特徴の中細ストレート麺。ミラノ本店では、ラーメン用の製麺機が高価なこともあり、パスタマシンで製麺している。 具のチャーシューは、豚ばら肉にイタリア産岩塩をすり込み、グリルしたものを真空低温調理で仕上げる。イタリアの豚ばら肉の塩漬け、パンチェッタの製法を取り入れて作っている。 ルカ氏が作るラーメンは、開店当初から改良に改良を重ねてきた。「お客さんの意見を聞いて、どうしたらよりおいしいラーメンが作れるか、トライ&エラーの繰り返し。お客さんにインスパイアされながら、今の味にたどり着きました。スープをひと口飲んだときにインパクトがあり、ふた口目はまた違った印象があり、最後まで飽きさせない。スープを飲み干しても、重さを感じさせないラーメンに仕上がっています」 「カーザルカ」の愛用食材 キッコーマンしょうゆ 製造販売=キッコーマン食品 (東京本社・東京都港区) 規格=20ℓ ミラノで醤油といえばコレ キッコーマンしょうゆの特徴である鮮やかな色、コクとキレのバランスがよい味、華やかな香りを持つ。和・洋・中どんな料理にも合い、世界中で使用されている。「ミラノでも醤油といえばこれですね。この醤油に和だしを加えて、香りとコクをプラスしたのが、ミラノとんこつラーメンのたれです」とルカ氏。 ルカ・カタルファモ 清掃会社で独立成功後に渡米 NY一風堂に衝撃を受ける 1976年イタリア・ミラノ生まれ。20歳の時にミラノで清掃会社を起業。経営が軌道に乗った30歳の時、会社を兄弟に譲り、「世界中のいろんな国を見てみたい」とイタリアを脱出して旅に出る。もともと食べることが好きだったこともあり、出発に先立って6ヵ月間、ミラノのイタリアンレストランでアルバイトをして、若干の料理修業をする。その後、ニューヨーク、シドニー、ロンドンを回り、旅費と生活費を稼ぐために、各地のイタリアンなどのレストランで働く。転機になったのが、ニューヨークの「一風堂」での豚骨ラーメンとの出合い。その味に衝撃を受けたルカ氏は、ラーメンへの情熱と関心を高めていく。ニューヨークに滞在していた2009~10年の約1年間、ニューヨーク中のラーメン店を食べ歩いた。その後、ロンドンのうどん店でだしの勉強したのち、日本に1ヵ月間滞在し、毎日3食以上のラーメンを食べ続けて研究。13年、37歳の時に、ミラノでラーメン店を開業する。あたらしい視点でラーメンを伝える情報誌!